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今こそ聴いて欲しい。日本が世界に誇るプロデューサーNujabes(ヌジャベス)

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今こそ聴いて欲しい。日本が世界に誇るプロデューサーNujabes(ヌジャベス)

Nujabes(ヌジャベス)、という名前のミュージシャンを聞いたことがありますか?

メジャーで活動していたわけではないので、もしかしたら知らないという方もいるかもしれません。
以前にテニスプレーヤーの錦織圭選手がお気に入りのミュージシャンとして名前を挙げていたので、「なんとなく知ってるよ!」という方もいるのではないかと思います。

日本人のヒップホップのプロデューサー/トラックメイカーであるNujabes(以下、ヌジャベス)は、30数枚のシングルのリリースを経て、2003年に1stアルバム 『Metaphorical Music』をリリースして以来、国内外から高い評価を受けてきました。

ところが、彼は2010年の2月26日、不慮の交通事故で帰らぬ人となってしまいます。
ぼくがヌジャベスの音楽に出会ったのはその後のことでしたが、当時を知る人は、今もそのときの衝撃と悲しみを忘れられないと話してくれました。

死から5年以上の月日が経った今も、ヌジャベスの音楽はヒップホップ・ファンに限らず、多くの人に愛されています。

多分に漏れず、ぼくもそんなリスナーの一人。

この記事ではヌジャベスのつくる音楽の魅力を皆さんにお伝えします。

彼の音楽は、
“今ぼくの心を掴んで離さないもの”であり、
“もっともっと多くの人の心に響くもの”だということ。

この二つのことに関して、ぼくは確信しています。
その確信を胸に、以下ヌジャベスについてご紹介しましょう。

この記事をきっかけに、ヌジャベスについて知る、そして好きになる人がいれば、こんなに幸せなことはありません。

ヌジャベスの描く、心を震わせる音楽の風景

まずは一曲、どうぞ。

ぼくがヌジャベス自身のことを詳しく書く前に音源を紹介したのには、理由があります。

街のどこかで耳にした音楽がふと気になってしまい、気づけば心を奪われてしまう。
ヌジャベスの音楽には、そんな魅力があるとぼくは思っています。

その疑似体験をして欲しかった、というわけです。

紹介したのは、1stアルバム 『Metaphorical Music』の一曲目、「Blessing It (Remix) (featuring Substantial & Pase Rock)」。
イントロからホーンの美しいメロディーの楽曲に惹きこまれた人も多いはず。

ヒップホップの楽曲は基本的に、“サンプリング”という、既存の楽曲からリズムパターンやフレーズを取り出して、ループさせたものを新たな楽曲に使用する、という手法を用いて作曲されます。

ちなみに個人的には、「ヒップホップってあんまり好きになれないんだよね」と言われたときに、同じフレーズをループしていることに聴きにくさを感じるのではないか、と思っています。

Aメロやサビなどで展開を分けることができるいわゆるポップスと違い、どうしても平坦な曲になってしまいますから。

ここが、ぼくがヒップホップ・ファン以外にもヌジャベスを好きになってもらえるのではないか、と思うポイントです

ヌジャベスの楽曲の素晴らしさの一つは、ズバリそのサンプリングの抜群のセンス。

先に紹介した「Blessing It」も、Pharoah Sanders(ファラオ・サンダース)というジャズ・サクソフォーン奏者の「Save Our Children」という楽曲をサンプリングしています。

確かによく聴けば、同じフレーズを繰り返していることに気づくと思います。

しかし、どこか切なく叙情的、心を震わせるフレーズが繰り返される楽曲には、決して平坦さはありません。
それどころかループされるごとに、まるで静かな池に石を投げ入れた波紋のように、深く深く心に響いてきます。

彼のサンプルを選び抜く確かな嗅覚と、その使い方のセンス。
「ループミュージックの魅力/可能性を最大限に引き出し表現している」とまで称されたヌジャベスがオンリーワンの存在として愛される理由が、ここにあります。

ループによって立ち上がるサウンドスケープは、懐かしい故郷の夕焼けのような、綺麗で懐かしい風景。

そう、ヌジャベスの音楽は、言葉に言い表せない風景を目にしている、そんな気持ちにさせてくれるんです。
他に誰のどの曲が、こんなにたまらない感情を呼び起こすのでしょう!

花火の音をサンプリングした以下の曲も、まさにその最たるものです。

聴く人の心を奪って離さない、心象風景。
そんなヌジャベスの音楽には、空間をグッドなフィーリングで満たしてくれる側面もあります。

例えばほっと安心できる自室や、居心地のいいお気に入りのお店。
そんな場所に、緊張とは対極にあるようなヌジャベスの楽曲の優しいメロディーはよく似合います。

抜群なメロディーの良さとそのループが、張りつめた気持ちを落ち着けてくれるのではないでしょうか。

錦織圭選手が試合前によくヌジャベスを聴くという話を聞いたとき、とても納得できると思ったものです。

ヌジャベス=瀬葉淳の人となり

Nujabesという名義は、音楽をはじめる前からのペンネームであった瀬葉淳(Seba Jun)のローマ字表記を逆から読んだもの。

彼はヌジャベスと名乗り始める前、まだ少年の面影を残す20歳くらいのときから、熱心な音楽ファンであったといいます。

ヌジャベスは、1995年に渋谷区宇田川町でレコード・ショップ「Guinness Records」を開き、自身の作品を発表したレーベル「HYDEOUT PRODUCTIONS」を主宰しました。

彼の類まれなるサンプリングのセンスは、多くの素敵な音楽に触れる中で、その当時から養われたものだったのでしょう。

1996年には、DJの橋本徹がレコード・ガイド『Suburbia Suite; Suburban Classics for Mid-90s Modern D.J.』を制作する際に、橋本に「ライターとして参加させてほしい」と直談判したそう。

橋本徹は、ヌジャベスの追悼アルバム『Modal Soul Classics II』のライナーノーツに当時のことを以下のように綴っています。

「その眼は決して忘れられないほど真剣で純粋で、ナイーヴな少年のような佇まいと繊細さの中に、執念のようなものさえ感じさせた。その話しぶりはまだ不器用さを残しながらも、熱意は際立っていた」

後にヌジャベスは、橋本徹が主催していたパーティー「Free Soul Underground」でよくかかっていたという、The Friends of Distinction(ザ・フレンズ・オブ・ディスティンクション)の「When a Little Love Began to Die」という曲をサンプリングし、「Don’t Even Try It (featuring Funky DL)」という楽曲をつくっています。

古き良き音楽を愛し、それを自身の解釈で表現したヌジャベス。

彼の音楽はぼくにとって、ただ美しくて切ないだけではなく、素晴らしい音楽が詰まった宝箱なのです。

志を共にした、多くの共演者たち

ヌジャベスの楽曲には、多くのラッパーたちが客演しています。
彼の楽曲もさることながら、圧倒的に美しい世界観と対等に存在する彼らのラップも聴きどころです。

時に滑らかに、時に力強く……。
ヌジャベスの楽曲がぼくのヒップホップへの目覚めだったと言っても過言ではありません。

後に紹介する「Luv (sic)」シリーズを共作したラッパーのShing02(シンゴ・ツー)をはじめ、国内外から多くのリスペクトを集めています。

ヌジャベスとの数多くの共作を手掛けた、ロンドンのラッパー/プロデューサーのFunky DL(ファンキー・ディーエル)も、同じ年に生まれ、奇しくも同じ2月に亡くなったヌジャベスと伝説的プロデューサーのJ DILLA(ジェイ・ディラ)、という二人への哀悼の意を込めたアルバム『FEBURUARY』を発表しました。

幾度となく行われているヌジャベスの追悼イベントには、世界中から共演者たちが駆け付けます。

2015年のイベントにはぼくも足を運びましたが、その現場に溢れた愛たるや……。

あの場にヌジャベスがいなかったことをファンとして悲しく思うと同時に、20歳そこそこのぼくより一回り年上のファンたちや、共演者たちからの愛情を肌で感じた現場でした。
あの場にいられたことを、ぼくは何より嬉しく思います。

紹介する動画は、2010年に開催された追悼イベント「Nujabes Eternal Soul」の様子と、共演者たちからのヌジャベスへの想いを収めた映像です。

これを観るたびに、ヌジャベスを一度も観れなかった悔しさと、今ヌジャベスの音楽を聴ける喜びがない交ぜになり、たまらない気持ちになります。

Nujabes "Eternal Soul" from DEFRAG on Vimeo.

ヌジャベスがコラボしているのはラッパーだけではありません。
日本のロックバンドのtoe(トー)とクラムボンは、ヌジャベスの名曲「Reflection Eternal」をカバーしています。

ヌジャベス自身も、生前にクラムボンの楽曲「Folklore」のリミックス作品「Imaginary Folklore」を手掛けました。

素晴らしい才能は、時にフィールドを越えて交わるのですね。
クラムボンにとっても、ヌジャベスとの繋がりを示す大事な作品です。

クラムボンの原田郁子さんのボーカルと、ヌジャベスのメランコリックな世界観がマッチした「Imaginary Folklore」は、ヌジャベスの数多くの作品の中でも珍しい、日本語女性ボーカルもの。

他の作品では有り得ない独特な色彩感のある、ぼくも大のお気に入りの一曲です。

揺るぎない海外からの評価

2015年の追悼イベントでのこと。
同行していた知人が、以前に行ったイギリスのフェスであったことを話してくれました。

なんでも、そのフェス会場で出会ったイギリス人に「お前は何人だ?」と聞かれ「日本人だよ」と答えたところ、「ヌジャベス好きだぜ!」と返されたそうです。

ヌジャベスの描くサウンドスケープはどこか日本的な趣も感じられます。
彼がサウンドトラックを制作したアニメ『サムライチャンプルー』は、海外でも人気を博していたとのことです。

上記のような海外のラッパーとの共演もあって、世界でも唯一無二の楽曲をつくるミュージシャンとして、その人気は未だに根強いもの。
SoundCloudのコメントなどを観ていただければわかると思いますが、海外からの高評価のコメントが数多く寄せられています。

もし海外の人に「日本人のミュージシャンを紹介してくれよ」と言われたら、ヌジャベスを紹介してみてはいかがでしょうか?

ジャズなどの黒人由来の音楽を基盤としながらも、ヌジャベスのフィルターを通せばたちまち日本的なわびさびが立ち上がる。
きっと気に入ってくれるはずです!

ヌジャベスの音楽は、まだ生きている

ヌジャベスの死後、それまで共作を続けていたミュージシャンや、主宰レーベルHYDEOUT PRODUCTIONSによって、数多くのヌジャベス名義の作品がリリースされました。

遺作となった3rdアルバム『Spiritual State』や、ヌジャベスの残したビートとフルートの音源が冴えわたる、haruka nakamura『Lamp feat.Nujabes』などなど。

どれもヌジャベスの魂と周りの方々の想いが込められた、エモーショナルな楽曲ばかりでした。

2015年初頭には、生前の彼が残した切ないながらもダンサンブルな作品「Child’s Attraction」について、生前のヌジャベスが大きな影響を受け、共作を切望していたダンス・ミュージックのプロデューサー、Joe Claussellによるリミックス・プロジェクトがヌジャベスの仲間たちによって企画されました。

「遺された素晴らしい作品を、世に出そう」
これはヌジャベスの才能、そして彼自身の純粋な人柄があったからこそ、仲間たちの手によって成し遂げられたのだろうと思います。

そして来る2015年12月9日には、ヌジャベスとラッパーShing02の共演作品「Luv(sic)」シリーズ6部作の完全盤がリリースされます。

「Luv(sic)」シリーズは、ヌジャベスが組んだビートに乗せて、Shing02が「『音楽の女神に宛てて』書いた手紙」というテーマのもとラップしているもの。

2000年に初めてコラボレーションして生まれた処女作の「Luv(sic)」の発表から15年経った今も、多くのファンの心に残り続けている、ヌジャベスのキャリア史上屈指の名作シリーズです。

ヌジャベスの死後、Part 4~6が発表され完結したこのシリーズが、一枚のCDになりました。

厳選された各パートのオフィシャル・リミックスも収録されたこのスペシャルな作品。

ヌジャベスとShing02、若いころから志を共にしていた二人の魂の傑作、ゲットしない手はありません。

ヌジャベスのほとんど全ての作品がSounCloudで公開されています

ここまで、ヌジャベスと彼の楽曲の素晴らしさについて、一ファンとして語ってきました。
もしこの記事で「ヌジャベスもっと聴きたいかも!」と思っていただけたなら、ぜひ彼のSoundCloudのアカウントをチェックしてみてください。

なんと、彼がこれまでリリースしてきた作品の、そのほとんど全てが公開されています。
3つのフルアルバムはもちろんのこと、HYDEOUT PRODUCTIONSコンピレーション・アルバムに収録された珍しい楽曲まで。

さらに、2003年のHYDEOUT PRODUCTIONSの公式ショップ「tribe」のオープンの際に、少量のみ配布された、DJミックスの音源までアップされているのです!

このDJミックス、有名なアンセムのような曲は入っていないのですが、どれもヌジャベスの手によって、まるでダイヤの原石が磨かれてその真価を現したかのように、一曲一曲が素晴らしい存在感を放っています。

まさに、ヌジャベスの広範な音楽への愛情と情熱が、時を越えて蘇ってきたのです。

もちろん、公式ショップなどから音源を入手していただくのもアリですが!
ぜひ気軽にSoundCloudからでも、ヌジャベスの言葉にしがたい叙情的な世界へ、足を踏み入れてください。

・HYDEOUT PRODUCTIONS 公式サイト
http://www.hydeout.net/

・SoundCloud 公式アカウント
https://soundcloud.com/junseba

・HYDEOUT PRODUCTIONS 公式ショップ tribe
http://www.hydeout-tribe.net/

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