人生を変えてくれたBIGMAMAへの偏愛を語る
全ての始まりは19歳の春。
当時お付き合いをしていた方に「このバンドいいから聴いてみなよ!」と言われて渡されたのは、『Love and Leave BIGMAMA』と書かれた赤いジャケットのCD。
「BIGMAMA?大きいお母さん?変な名前だな~」なんて思いながらも受け取ったわたしは当時、J-POPが大好きで、「歌詞の意味が分からないから」と英語詞には抵抗がありました。
が、好きな人の趣味に少しでも近づきたいという邪な思いに背中を押され自宅に帰って聴いてみたところ……え、なにこれ、聴きやすい、というか、好きだ!!!!と即ハマり。
速攻MDに落として聴き込む毎日を過ごし、自分でCDを買って、歌詞カードは手帳に挟んで持ち歩いていました。
何度思い返してもあの瞬間に自分の人生は変わったと思いますし、あの日から変わらず今もわたしの一番はBIGMAMAです。
今では週に何度か訪れるようになったライブハウスも、デビューは八王子Match BoxでのBIGMAMAのライブでした。
今回はそんなわたしのBIGMAMAへの想いをここぞとばかりに書き綴りたいと思いますので、長いですがお付き合いくださいませ~。
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BIGMAMAのメンバー紹介
と、その前に。BIGMAMAをさくさくっと紹介します。
メンバーは以下の5人。
- 金井政人(ボーカル/ギター)
- 柿沼広也(ギター/ボーカル)
- 安井英人(ベース)
- リアド偉武(ドラム)
- 東出真緒(ヴァイオリン
作詞・作曲はほぼ全て金井さんが担当しています。
大学生だった結成当初は金井さん(当時はベース)、柿沼さん、リアドさんの3人を含む5人で活動していましたが、進路の関係でギターとヴァイオリンの2人が抜けてしまったために一時活動休止。
そこで、同級生であり他バンドでベーシストをしていた安井さんと、神戸のライブハウスで働いていたヴァイオリン経験者である真緒さんが正式メンバーに加入し、今に至ります(金井さんはこれを機にギタリストへと華麗に転身)。
ケタ違いの発想力を発揮している歌詞
そんなBIGMAMA、キーマンはやはりフロントマンである金井さん。
そのルックスから最近では「王子」という愛称が定着。バンド活動のみならずモデル活動もされている金井さんですが、まずはこちらのMVをご覧ください。
王子、叩かれる、投げられる、ケチャップかけられる、殴られる、そして落ちる。
正直に言おう、「王子、かっこ悪い」。
さらにもう一発、どん。
「王子、牛に振られる」の巻。
この2曲はわたしが最初に聴いたファーストアルバムに収録されているのですが、おかげさまで金井王子のイメージは「情けない曲が似合う、超情けない人」に収まりました。
ですが、金井さんの言葉選びの秀逸さはそんな情けなさを吹っ飛ばします。
もうね、発想力が桁違いなんです!
さらに歌詞カードと共に挿入されているセルフライナーノーツ(金井さんによる楽曲解説集)!これが最高に面白い!
BIGMAMAの曲が全て表情豊かな理由のひとつが、各曲にきちんとキャラクターが立った登場人物がいるということ。
人間や動物、さらにはアンドロイドまで出てくる曲がずらり!
そして、この曲にはあの曲に出てきたキャラクターが出演!なんてこともあって、ライナーノーツにはそのヒントが隠されています(アルバム内のみならず、他のアルバムにも出てくることも。「お前、もしやあの時の……!?」とマンガみたいなことが曲中に起こります)。
聴いて、読んで、紐解いていくアルバム。
楽しみ方や感情移入が自由自在のアルバムなんて、とっても面白そうじゃないですか?
このように、BIGMAMAの楽曲は歌詞がひとつの読み物としても充分楽しめるから素晴らしいのです。
この後にも紹介するシングル『Weekly Fairy Tale』やアルバム『and yet, it moves ~正しい地球の廻し方~』、『Roclassick』はその賜物です。
歳を重ねるごとに響きまくる歌詞
と、次の作品に行く前に。
『Love and Leave』のなかでも年齢を重ねるごとに歌詞が深みを増して響いてくる3曲「the cookie crumbles」「We have no doubt」「Today」をご紹介します。
<多分手を放すのは簡単さ だけど背中の荷物が重ければ重いほど 君はきっと強くなれる その方がきっと頂上で笑えるから 生きるってきっとそういうことでしょう?>
「the cookie crumbles」
<明日が来るとは限らない 言葉は確かなものじゃない 僕には分からないよ でも約束しよう We have no doubt>
「We have no doubt」
<君が受けた愛の大きさを仮に10とするならば その愛に11の誠実さで答えるんだ そしたら世界はきっと愛に満ちるから>
「Today」
この歌詞を書いた当時21歳って……嘘でしょ金井さん……達観しすぎだよ……。
この人には一生頭が上がらないなぁとこてんぱんにやられた曲たちです。
今の年齢になって改めて聴くと、運動後のポカリスエット並みの吸収率で沁みてきます。
はぁ、本当にいい曲。
「現代版お伽話」を思わせる世界観
よし、浸ったところで話を戻しましょう。
金井さんにはこの後「妄想王子」というあだ名も生まれるのですが、その想像力の豊かさが開花された曲がこちら。
先に紹介した、牛に恋して鳴き声で振られる「Moo」にも驚きでしたが、この『Weekly Fairy Tale』 というシングルはまさに、BIGMAMA監修の現代版お伽噺です。
何度聴いても思いますが、BIGMAMAはこういうアレンジ曲が本当によく似合う!!
計算高い主人公は、血まみれになりながらも無理矢理ガラスの靴を履いてシンデレラになりきり、まんまと王妃の座をゲット。
<そうさ、今のご時世 運命は自分の手で手繰り寄せるもんさ>という現代への教訓めいたフレーズと、散りばめられるカノンの夢のような旋律のコントラストにご注目、ならぬご注耳!
真緒さんのヴァイオリンは、こうした美しいメロディーをより綺麗に映えさせてくれるんです……。
そんな見た目も可愛らしくていつも笑顔溢れる真緒さんですが、喋るとこてこての関西のお姉さんです。
そうかこれがギャップか……と、ひとりの女性としても見習いたい素敵なヴァイオリニストさんです。
ちなみにこのミュージックビデオの舞台となった式場とオルゴール館は山梨県にありまして、その光景を一人占めしたくて始発電車に乗って向かい、ひとりその光景を目の前にこの曲を泣きながら聴いたことも良い思い出です。
でも次はできれば恋人と行きたい……。
完全にどうでもいい補足ですが、BIGMAMAを教えてくれた例の恋人には「正直付き合うのは誰でも良かった」という理由で振られました。
そんな世知辛い世の中ですが、運命は自分で手繰り寄せようと思います。
そしてストーリー仕立てといえば絶対に外せないアルバムがありまして、それが『and yet, it moves ~正しい地球の廻し方~』。
この作品に至っては、収録曲全12曲を並べ替えて聴くとひとつの話になるんです。
これ、めちゃくちゃすごくないですか?まさに発想力の完全勝利。
そして過去に一度だけ、インストアライブにてストーリーに順じて並び替えたセットリストで演奏をしてくれたことがあるのですが、今まで経験したことのない感覚だったのです。
ミュージカルとは違うし、普段のライブともまた違う。
あの不思議で特別な場にいられたことは、今でも「あの時行けてよかったー!」と自室の窓から叫びたくなるくらいです。
さらにこの後リリースされた『Roclassick』『Roclassick2』というコンセプトアルバムでは、ロック×クラシック×金井政人の想像力の掛け算が爆発しています。
この組み合わせはもはや必殺技、向かうところ敵なしです。
アンパンマンに新しい顔か、BIGMAMAにクラシックか、みたいなところがあります。
ご覧の通り、ヴィヴァルディの「春」も名作「走れメロス」も、BIGMAMAにかかれば彼女が突然泊まりにくることになった思春期男子の性事情に一変します(この曲が発表された2010年のクリスマスライブでは、演出でコンドームが大盤振る舞いされていました。聖夜に降り注ぐゴムに群がる女子たちの背中、今でも忘れられません)。
かと思えば、こんなゴリッゴリの極太ベースラインを叩き出してくる幅の広さ……!
ベーシストの安井さんのベースは5弦で、さらに指弾き。
腹に胸にギュンギュン突き刺さる音を生み出す天才でして、わたしが敬愛してやまない方なのです。
安井さんの指さばきに見惚れた結果「生まれ変わったら弦になって安井さんに弾かれたい」と本気で願っていた時期もありました。
この曲のイントロを聴けば誰もがそう思ってしまうはずです、よね?
さらに安井さんは意外にもBIGMAMAのムードメーカー的存在なのです!
「全国ツアーを終えて、一番美味しかった酒はどこ県の酒だった?」という質問に「北海道で飲んだウイスキー」と答えちゃうお茶目さ!地酒じゃないんかーい!
そして個人的に安井さんのファンが過ぎるが故、安井さんを目の前にすると「怖気づく、顔を見ることができない、喋れない、もじもじしちゃう」の「おかしも」現象が現れます。
人は本気で憧れる人を目の前にすると動けなくなる、ということを学びました。
とまあ安井さんへの奇行についてこれ以上語るのは色々と(主に今後の自分の立ち位置が)危ないので、続いて柿沼師匠(以下、師匠)の美声についてお話します!
ラストの<僕が全部味方にしてあげるから>のところ!聴きました?
エッロい声してらっしゃいますよね……。
師匠はたびたび金井さんとふたりで弾き語りをしたりもするのですが、まぁーーー良い声!歌、上手すぎ!!
2014年のクリスマスライブの際に、秦基博さんの「ひまわりの約束」をソロで弾き語りしていたのですが、その声の艶やかさに感動してしまいそれはもうびーびー泣きましたわ……このアクトは、去年のベスト・弾き語り・オブ・ザ・イヤーに勝手に認定しました。
あと、師匠のソロ中の表情にも是非ご注目頂きたい所存です。
ほんっっとうに気持ちよさそうな顔をしていらっしゃいますので、ライブに足を運んだ際には、真緒さんを近くで見たい!という気持ちをぐっと堪えてぜひ上手側へ。
そしてリアドさんのドラミングの力強さにもご注目!
存在感は充分あるのに決して前には出すぎないという、ドラムのあるべき姿がここに極まっております。
リアドさんのドラミングは本当に正確で、しなやか。つまり超上手いんです!
さらにプレイ中の眩しいほどの笑顔!見ている方が照れてしまうくらいに良い笑顔をしてくれるんです。
リアドさんは本当によく客席を見てくれています。
ひとりひとりに笑いかけているのではないかというくらい!
そんなサービス精神旺盛で紳士的なリアドさんは、間違いなくBIGMAMA一のイケメンだと思っております。
成長していく金井王子に感じること
そうして名曲がどんどんと生まれていくなかで、冒頭で触れた「情けない金井王子」は「しっかり金井王子」へと徐々に変化していきます。
そしてその成長と併せて出てくるのが、「最初の方のばきばきした感じが好きだった」「今はなんだか落ち着いちゃったな」という寂しさにも似たあの感情です。
ロックバンドやメロコアバンドを好きになると避けては通れない道なんじゃないかなとも思いますし、わたしも思ったことは多々あります。
ですが、今のBIGMAMAには今のBIGMAMAの曲が一番似合います。
散々旧譜を紹介してきたくせに何を言うかと思われるかもしれませんが、これは断言できます。
そりゃあライブで昔の曲をやってほしいという気持ちはもちろんありますし、なかなか演奏こそされないけれど超ド級の名曲はたくさんあります。
「Broken Apart」とか「Baseball prayer」とかね、マジでやってくれ。
しかしながら、数年間BIGMAMAを追いかけ続けて強く思うのは「もっと広い場所で今の彼らの今の曲を聴きたい、ライブを観たい」ということです。
BIGMAMAの曲には「夢」がある
最新アルバム『The Vanishing Bride』を聴いて、さらにツアーに行って心底思いました。
この曲たちを、大きな会場で聴きたいと思いませんか?
想像したらとってもわくわくしませんか?
BIGMAMAの曲には「夢」があります。
きっとそれは、現実感や体裁が邪魔をして大人になると少しずつ自分の中から減っていくものなのでしょう。
過去を思い返したり、思い出に浸ったりすることは楽しいし、とても楽です。
それはきっと「結果が見えているから」だと思います。
夢を食べても生きていけないことを知っているからこそ、先が見えない不安を抱えて今さら踏み込めない、ということがたくさんあると思いますし、わたしもそうでした。
けれど、BIGMAMAがたまらなく好きで、彼らのライブを記憶に収めておくために数年間書き留めていた文章がある時認められて、今はこうして多くの人の目に触れる場所で書いています。
今のわたしが在るのは、紛れもなくBIGMAMAの音楽があったからです。
<たった3秒あれば僕達は未来を変えて行ける>
<偶然はない 全ては自分次第>
この2曲を聴いて、BIGMAMAが進む間に自分もきちんと進めていたのだなと思いました。
そしてこれからも一緒に夢を見ていきたいと強く、本当に強く思い、それは決意と言ってもいいほどでした。
「BIGMAMAの音楽が、聴く人の不幸を遠ざけるためのものであってほしい」と堂々と話す金井さんには情けなさなんてもう微塵も見当たりません。
謙虚だけれど負けず嫌いで、人想いの野心家。
そんなBIGMAMAから10で受けた愛を、11の誠実さで返していくことが自分の仕事だと思っています。
おっと。文章が後半になるにつれて思わず涙目になってしまいました……自分はBIGMAMAが本当に好きなんだなぁと改めて思えましたわ。うん、書けてよかったー!
そして今回触れることができなかった作品については、レミファのなかで必ずご紹介していきたいと思います!
『Dowsing For The Future』とか、『Dowsing For The Future』とか……!なんなら全曲解説とかしたい勢いですわ……。
そんなわけで今後も是非ともお見逃しなく~!
そしてこの記事をきっかけに、BIGMAMAの音楽がもっと多くの人に聴いてもらえますように!
以上、峯岸でした!
よし、BIGMAMAのライブDVD観よう!